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©Liku M. Takahashi

マリス宣言

The Declaration of Maris

2016 / マリス技法 (砂、アクリル絵の具、亜鉛版) / 1100×1140(mm)

2016 / Maris ( sand, acrylic paint, zinc plate) / 1100×1140(mm)

全盲の人に初めて見てもらう絵はお花でありたい。

人の心に花束を。

 大自然に咲き誇る赤いポピーは、太陽の光を求めながらも個々の花が自由な方向を向いて咲いています。

 ポピー(ケシの花)は鎮痛薬など医療として用いられる反面、麻薬アヘンの原料としても使われます。人が正負どちらに使おうが、ポピーの花はただそこに咲いているのです。

 この作品にはこのような思いを込めました。そして、ポピーの花の背景である亜鉛板には、2015 年5 月7 日に高橋が発表した[マリス宣言]が英点字で打ち込まれています。

以下マリス宣言全文

マリス宣言

-マリス-

 全盲の人も含む、すべての人が味わえる絵画技法とその技法を用いた絵画。アーティスト・高橋りくが、2009年〈マリス〉考案、2010年〔マリスアートプロジェクト〕を発足した。 〈マリス世界統一基準表〉により、色の明度(濃さ)を10段階の砂の粗さで表現する。濃い色は粗い砂、薄い色は細い砂、となる。色相を絵画の上に塗布するハーブエッセンシャルオイルの香りで表現する。たとえば、オレンジ色はオレンジの香り。紫色はラベンダーの香り。緑色はセージの香り。

-アートから世界の平和を -

 世界中の盲学校の子どもたちや目の見えない人びとに、晴眼者と一緒にマリスの絵を楽しんでほしい、代表的な芸術である絵画というものを観る体験をしてほしいのです。

耳の聞こえない子が骨振動で音楽を楽しめるように、盲学校の子どもたち、目の見えない人びとが、指で絵を楽しむことができたら、すばらしい!

 この世の中には容易にできないこともあるけれど、不可能だと思ってきたことを可能にする体験をとおして、アートで心を通わせることができれば、みんなが優しさを思い出します。それはきっと世界の平和に繋がるでしょう。

 

 

-マリスの計画-

 ヨーゼフ•ボイス(1921-1989)(※1)に影響を受け、"アートで理想の社会を作る"ことを目指します。

※1 ドイツの現代美術家•彫刻家•教育者•社会活動家。

①世界の目の見えない人みんなに、絵を見せたい。その方法としてマリスの絵画技法(※2)を役立てる。

※2マリス世界統一基準表は、音楽の五線譜のように世界共通。

②世界中の盲学校に、マリス絵画を回覧する。

③まず、先進国からスタート。先進国における初等教育の美術教科書・カリキュラムにマリスを導入し、混ざり合う社会への理解を幼少期から育む。対象は、目の見えない子どもたちと目の見える子どもたちすべて。

④初等教育の学習指導要領カリキュラムにマリスが採用された国々に、教材製造工場をつくり、多様なジャンルでハンディをもつ障がい者のために、雇用の場を創出する。

⑤各国少なくとも1ヶ所に“視覚障がい者のための灯台”を建てる。45歳以上の全盲の人を対象とする中高年ホーム(※3)をつくることである(夫婦の場合、片方が全盲のカップルを含む)。それによって身体の老化に伴う、本人と家族の負担と不安を取り除き、実り豊かな社会生活を営む人権を守る。

※3例として、日本には、本間昭雄氏(社会福祉法人 日本盲人福祉委員会会長)が推進した各県1ヶ所の全盲の人のハンディに配慮した老人ホームがある。

 

 全盲の人が安心して生活できる社会は、他の障がい者にも優しい社会になっていくことでしょう。そして人類全体が少しずつ人に対する優しさを増していく時には、戦争も無くなり、空も山も海も本来の力を回復し、きっと人間がもつ本来のすばらしさを自然と復活できるようになっているに違いありません。

 

2015.5.7 アーティスト高橋りく

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