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都会のラビリンス

1994 / マケット/ ガラス、木、 鉄 / 0.5×0.5(m)

都会のラビリンス

 このガラス板とステンレスと空き缶で作られたラビリンスは、入り口からは目標である出口も、その奥にある木もみえているのですが、中に入り込んでしまうと、出口への方向感覚しか頼るものはありません。なぜなら直線上には、複数のガラスで遮られていて、直進できないのです。
 カラフルな空き缶で彩られたカベは、見ているうちに無機質な都会の残骸のように思えてきます。迷路の中には多くの鏡面扉があり、それに映る自分の姿は、背景に映り込む一面の缶のカベの中に埋もれて見えます。
 そしてその扉は、ノブがないので押して入ることができても、再びもとの道に戻ることはできません。 

 都会で生活することは、まるで迷路の中に入り込んでいるように私には思われます。
​ 先のわからない壁に囲まれる中、疲れて困り果てた末、ふと見上げると、切り抜いたように長方形の青い空があります。
 上を見ながら歩き続けると、いつしか目の端に出口の方向を指し示す、大木の上部がときどきちらりと見えるようになります。

 失いかけた方向感覚がよみがえり、元気が湧いてくるでしょう。

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